mirai

3日目2

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 携帯を取り出し、家に電話をかける。
 コール音が三回ほど鳴ってミライが電話に出る。
「もしもし、時三だよ」
『ジーサンなんかあったの?!』
「まぁさっそくなんだけど、僕の下駄箱が使われていたんだ」
『下駄箱が使われてたって? どういうこと?』
「まんまだよ。僕の下駄箱の上履きが使われて他人の靴が入っていたんだ」
『それはヘンだね』
「ヘン過ぎるよ...。これじゃあ何が起きているか全然分からないよ」
『下駄箱が使われているのはかなりヘンだけど...。他に何かあった?』
「他にか...」
『何でもいいの、ちょっと気になったことでも言って』
「うーん、愛がなんとなくなんだけどよそよそしく感じた...かな。まぁでも朝ちょっと
会話無かっただけだから、僕の自意識過剰なだけかもしないし」
『...今日に限ってはどんな些細な変化でも目をつけていた方がいいよ』
「うん...そっちはなんかあった?」
『特に何もないよ、ジーサンの方は下駄箱周辺に関する情報を集めてみてよ。あとそれ
と...』
 その時、二時限目の始まるチャイムが響く。
「ごめん、授業が始まるから続きは後でね」
 時三は携帯の電源を切り、三階の教室へ急ぐ。
 二時限目の化学を準備する。横目で愛を見る。授業に集中しノートを取っている。
(当たり前の光景なんだけどなんか違和感ある...気がする)
 時三もノートを取る。
(やっぱり自意識過剰なだけかなぁ。愛のことがなんでも分かるわけでもないし)
 二時限目が終わる。
 時三は愛に話しかけず、次の授業の準備をして愛が話しかけてこないか待つ。
「...」
「...」
「...」
「...」
(これは...気まずいな...。ミライに何かあったか電話するか)
 時三は人がいないのを確認し校舎裏で、携帯を取り出す。
「ミライ、何かあった?」
『何もないよ。今どこから電話しているの?』
「校舎裏からだよ」
『もしかしてトイレの窓が近くにある?』
「よく知ってるね」
『昨日脱出する時に使ったからねぇ。それで何かジーサンの方ではあった?』
「こっちも愛のよそよそしさ以外は特に」
『...それじゃあさっきの続きなんだけど...ジーサンの未来に関わるかもしれないけどや
っぱり話しておきたいの...いいかな?』
「今はもう聞かないと話が進まないと思う。いいよ、話してよ」
『それじゃあ話すね。未来のジーサンはなんでこの時間を選んだかって言うと、友達と
喧嘩したって言ったの』
「喧嘩? 誰と」
『......友達とって言ってたの。それで、喧嘩って言っても言い争ったりとかじゃなくて
よそよそしくなって離れて行ったって言ったの』
「待ってよ、じゃあもしかして...」
『考えられないけど恐らく愛が......このままだとジーサンと仲が悪くなっていくと思
う』
「そんな...。なんで仲が悪くなるの? ...あっ」
『それが分からないからあたしがこの時間に来たの』
「じゃあ、愛が僕から離れていく理由を見つけないと...」
『うん、根本的な解決にならないの』
『未来でのおじいちゃんと愛との喧嘩もあるから、ここで解決しないとまた同じことに
なるかも知れないの。それに下手したらあたしがいることで、もう同じ結果にならない
かもしれない。写真のおじいちゃんが消えたのも喧嘩の時期が早まったせいで写真の事
実が成立しなくなったんだと思う』
「ごめん、ちょっと待って」
(このままだと、愛が離れて行っちゃう? なんで? 昨日までいつも通りだったのに
...。なんで? ...それを未来の僕が欲しがっていた答えだ。 でも後になっても分から
ない事が今分かるのか? いや今だから分かることだってあるはずだ)
 時三は放心し頭の考えがまとまらない。
『大丈夫? ...もしかしたら今言うことじゃなかったかな?』
「いや...聞こうとしなかった僕が悪かったよ」
『...一応整理して簡単に言うと愛のよそよそしさの原因を解決しないとまた時三は同じ
未来にたどり着く。だから何でもいいの。愛のよそよそしさ以外に何か気になることは
しらみつぶしで当たっていって、おじいちゃんの時は何も無かったから何も分からなか
ったけどジーサンにはあたしが教えた情報とあたしが干渉した今がある。だから、同じ
結果にはならないはず。何かしら違いが出るはずだから...』
「それが下駄箱の靴なのかな?」
『そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。...断言は出来ないけど今のところは
それしか違いがないから下駄箱のことを攻めていくしかないと思う』
「分かった...。とりあえず何をすればいいか、見えてきただけでも大きな前進だね。放
課後に下駄箱を使った人に会ってみる。そのときにまた連絡するよ」
『うん、わかった。...ジーサン頑張ろうね』
「うん、頑張ろう」
 時三は携帯の電源を切って時計を見るともうすぐチャイムが鳴る時間だった。
 携帯をポケットにしまい、急いで教室に戻る。
 三時限目の生物が始まる。
(でも、今のところ下駄箱以外何も無いというけど...。下駄箱を間違えた人からどうい
う風に愛の関係が戻るんだろう? もしかしたら、全然関係ないんじゃないのか?...で
も今出来ることはそれしかない。...今出来ることをやろう)
 三時限目が終わり四時限目が始まる。授業を聞いては、いるが頭に入ってこない。と
なりにいる愛が分からなくなり得体の知れない者に感じてしまい、何を話していいのか
分からなかった。
 四時間目が終わり、昼休みになる。いつもなら二人で食べる弁当も今日は一緒に食べ
る気になれなかった。
「ごめん、愛。弁当がないから今日は食堂で食べてくるね」
「うん...」
 一言やり取りするだけ。時三はこれだけしか出来ないことや、弁当を持ってきている
のを偽って食堂で食べる昼食はのどを通らなかった。
 昼食が早く済みすぎて昼休みの時間がいつもより余っていた。
 なにか変わったことは無いかと学校中を回っていたがいつもいる場所は教室だったた
め変わっているのかどうかは特に判別できなかった。
(愛といない時間の方が少なかったんだなぁ)
 たまに一人で昼食をとる時もあった。それでも食べ終われば教室に戻って愛と話して
いた。こうやって一人で学校を歩き回ることなんてなかった。
(結局僕や愛の回り以外の変化は関係ないんじゃないだろうか。......今は教室に戻る気
にはなれない。ミライに電話しよう)
 昼休みになると校舎裏も人がいる。時三は立ち入り禁止の屋上に向かった。

『どうしたの? 何かあったの?』
「いや、ただ、愛と一緒にいづらくて一人で昼食食べたんだけど時間があまりにも経つ
のが遅いもんでつい...」
『なーんだ。ようは話し相手になってくれってことね!』
「うん」
『なになに! 愛が必要だって今になって気づいたぜぇ...って感じ?』
「必要というか...まぁいなくなるととても不安になる存在だったというか...」
『それを必要って言うの、もう!』
「うん...そうだね...」
『うわぁ、大分参っているね。本当にジーサン?』
「僕じゃなかったら、電話かけられないでしょ」
『そうだね。で、本当に大丈夫?』
「あぁ、うん。未来の僕が過去を変えたかった理由が分かった気がする」
『まぁ、ジーサンは良い方だよ。おじいちゃんの時はまだ気がするってだけで何も出来
なかったんだから。でもジーサンは取り返すチャンスがあるんだから、そんな弱っちい
声出さないで、元気出して』
「うん、そうだね。まだ終わったわけじゃない。僕には愛が必要なんだ。今それが知れ
て良かった! そう考えよう!」
『恥ずかしい事言ってるけど、前向きでいいと思うよ! 頑張れジーサン!』
 時三は少し赤面する。
「......あぁ! 頑張るよ!」
 昼休みの終わりをチャイムが告げる。
「じゃあ、放課後にまた連絡入れるよ」
『ほいほい、またあとでね』
 携帯を切って教室に戻る。
 となりには愛がいるが今は話しかけない。今話しかけてもお互い余計に気まずくなる
だけだ。
(放課後になったらすぐに下駄箱に行こう。そこで下駄箱を使った人に会わないと)
 五時限目、六時限目と授業が終わりホームルームも終わる。
 時三は急いで教室を出る。
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