mirai

みらい2

前のページに戻る/次のページに進む/もくじに戻る/
―お手伝いしましょうか。
――いーや、何もしなくていいよ。やりたいことをやっていてよ。
―...。
――おいおい、どこ行くの?
―私はここで待機しておりますので御用があればいつでも呼んでください。
――じゃあ、さっそく御用です。やりたいことをやってください。
―......ありません。
――悪かったよ...。一緒にこれを片そうか。
―......わかりました。

――ふぅー。おわったぁ...。
―お疲れ様です。
――時間が余っちゃってるなぁ...。そうだ! どこか行きたいところはある?
―...ないです。
――ないってことはないでしょう?
―ないです。
――そうだ、じゃあ出来たばかりのファミレスに行こう。ご飯は食べること出来るんだ
ろう?
―一応できますが...。
――じゃあ行こう! すぐ行こう!
―でも私は食事を取らなくても大丈夫です。ロボットですし。
――何言ってんの?! 一緒に食べなくちゃ楽しくないだろう。
―...わかりました。ではご一緒します。
――あ、待った。今僕が一緒に食べたいから仕方ないなぁってニュアンスじゃなかった?
―違うんですか?
――あ、いやまぁそうだけど...。君はどうなんだい? 一緒に食べたい?
―私ですか...。私は...


――なんだ、あの店は...。ロボットは入店できないって...。
―大丈夫ですか?
――別に大丈夫だよ。君はなんとも思わないの?
―私は大丈夫です。
――大丈夫ってことは...何か今のやりとりで感じるものはあった?
―感じるモノですか?
――そう、感じるモノ
―分かりません。
――君と一緒にご飯を食べようとした。そしてそれを第三者に拒否された。
―...。
――何か感じるモノは何かないかな?
―......分かりません。
――そう...。じゃあ他にどこか行こう。っと思ったけどどこかに行く時間はないから...
公園の屋台でなんか食べようか。
―分かりました。
――何が食べたい?
―いい笑顔ですね。...食べたいものですか...。
――お好み焼き、たこ焼き、いか焼き、焼きそば、おでん、ベビーカステラ色々あるけ
ど、どうする?
―私はどれでもいいです。お選びください。
――僕はベビーカステラにするよ。君はどうする?
―私はどれでもいいです。お選びください。
――じゃあ、君が食べたいものを選ぶよ。
―私が食べたいもの...ですか。
――君はどうする?
―私は...


――君はたこ焼きかぁ。あの中ではそれが好きなんだね。
―あの中で一番安かったので。
――あつ、あつ...。
―聞いてませんね。でもいいです。いただきます。
――あ、わりとおいしいよ。一つ食べる?
―大丈夫です。
――いいの? おいしいよ。
―大丈夫です。
――じゃあ、僕は君のたこ焼き一つ頂戴。
―どうぞ。
――......あったかいうちはおいしいけど冷めると半減だよね...。はい一つどうぞ。
―大丈夫です。
――あげるんじゃないよ。これはこうかんっこ。
―こうかんっこ? 交換ですか。
――そうだよ。
―交換を要求するのでしたら、もう一つになります。
――意外とあざといね...。
―いえ、交換ですので。
――いいよ。はいもう一つ。...おまけにもう一個つけてあげよう!
―いえ交換でしたら、二つで十分です。
――じゃあ交換じゃなくてプレゼント。
―プレゼント?
――そう、君にあげたいからあげる。はいどうぞ。
―...いいのですか?
――プレゼントなんだから良いも悪いもないよ。もしかしてイヤだった?
―いえ、そんなことはありません。
――君は貰ってどう思った?
―貰ってですか...。
――そう、君はどう思った?
―私は...

――ベビーカステラ食べきれないからもって帰ろう。
―持ちましょうか?
――このくらい大丈夫だよ。たこ焼きはおいしかった?
―はい、おいしかったです。
――おいしいものを食べてどう感じた?
―おいしいものを食べてですか?
――そう、おいしいものを食べて、君は、どう感じたかな?
―私は...。


――君はすごく良い肩してるんだね。
―ロボットですから
――僕は全然運動しなかったからキャッチボールもまともにできないよ。
―野球ボールの投げ方を教えましょうか?
――いや、良いよ。自分で投げやすい投げ方を見つけるよ。それも楽しいしね。
―楽しい...ですか。
――あぁ、色々思考錯誤していくことは楽しいことだよ。...そりゃ、うまくいかないと
つまらないけど、次に何を試すかっていう楽しみが増える。つまらないことだけじゃな
いのさ。なんでも。考え方次第でいくらでも変わるよ。君は楽しみ方、考えたことはあ
る?
―楽しみ方ですか。考えたことはありません。
――じゃあ僕とのキャッチボールで何を考え何を感じる?
―何を考え、何を感じたかですか?
―そう、君は何を考え何を感じる?
―私は...。


――君は料理もうまいんだね。
―ロボットですから。
――味付けは薄め何だね。
―薄ければ濃くすればいいだけですし。材料も少なくて済みますから。もし濃い目が良
いなら言ってください。
――僕は気分によって薄いのも濃いもの好きだなぁ。
―そうですか。では料理をするときにお伺いします。
――いやいや、いいよ。聞かなくても教えてくれるだけで。
―いいのですか?
――うん、君の気分で味付けの濃さ薄さを決めてくれていい。
―分かりました。
――ところで、君はどうやって今日は濃いめにしよう。薄めにしようって決めるの?
―今までの統計をとって偏り過ぎない食事になるようマニュアルされております。
――君はじゃあマニュアルに沿って決めてるの?
―そうです。
――じゃあ、今日からは君の気分で決めてよ。誤解される言い回しだけどマニュアルは
ポイしちゃっていいよ。
―ポイ...ですか? ポイ...というのは?
――あぁ、破棄しちゃってって事、そういうことできる?
―はい、最初から入っているツールというだけなのでこれは、消去しても問題ありませ
ん。
――はいじゃあ、ポイして。
―ポイ...です。
――それじゃあ、晩御飯を作ってもらいます。
―分かりました。何をお食べになりますか?
――まかせる。君の作りたいものを作ってよ。味付けもまかせる。
―まかせる...ですか。
――そう、君の作りたいものを作ってよ。今日は作りたいとは思わないなら作らなくて
いいよ。
―何を作りたいかですか。
――そう、君は何を作りたい? どうしてそれを作りたいと思う?
―何を作りたいか...。
――君は何を作りたい?
―私は...。


――そうだ、君にまだ名前を付けてなかった。
―そうですね。
――何て名前が良い?
―あなたが呼びやすい呼び方をどうぞ。
――まぁ、そこはそうだよね。子供が自分で自分の名前つけないもんね。
―そうですね。
――うーん。君を科学の進歩の象徴として...ミライと名付けよう。
―ミライ...ですね。ありがとうございます。
――そうだ、僕のことはジー...。いやおじいちゃんって呼んでくれ。
―おじいちゃんですね。分かりました。
――反応が薄いよ。この年なのにおじいちゃんだよ。何かないの?
―年相応ではないですね。
――ミライは無愛想だなぁ。そんなんじゃモテないよ。
―私はロボットです。おじいちゃん以外の人と接することはあまりないと思います。
――ふふ、なんでロボットだと人と接することが少ないのさ?
―それは、私はおじいちゃんの世話をするために作られたからです。
――ミライはロボットで僕が持ち主だからなんでも言うこと聞くんだよね。
―はい、応えられることには全てに...。
―じゃあ、今からミライは僕の世話をしないでいいよ。好きなことをやってくれないか
い。
――それでは、私は何をすればいいのでしょうか?
―それは自分で考えるんだ。でも僕の世話以外ね。僕にお願いするのもいいよ。応えら
れるかどうかは分からないけどね。
――...。

――どうなにかやりたいことは見つかった?
―分かりません。
――うーん、人もいきなり野放しにしても学ぶものはないもんね。じゃあちょっと待っ
てて。

――はい。ミライこれ。
―「自分を変える方法」という本ですがなんですか?
――これを読んでひとつひとつ実践してみなよ。
―分かりました。
前のページに戻る/次のページに進む/もくじに戻る/
inserted by FC2 system